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二十歳の若者から出された請願第1号「気候非常事態宣言に関する決議」については採択されませんでした。

請願討論2 (1)

3月24日の本会議で日本共産党は採決に先立ち、賛成討論を行いました。

以下、全文です。

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日本共産党の井坂直です。会派を代表して気候非常事態宣言を求める請願に賛成する立場から討論を行います。

請願者の方は、「脱炭素社会の実現には、大きな変革が必要である」ことを訴え、「横須賀市議会が『気候非常事態宣言』を決議し、気候変動の『危機感』を市民と共有するとともに、横須賀市の取り組みを後押ししてほしい」というのが請願の趣旨です。

3月16日の参議院環境委員会で日本共産党の山下芳生議員が、1月のNHKスペシャル「暴走化する温暖化 脱炭素への挑戦」の番組内容を引用し、「現在、地球の平均気温は産業革命前と比べてプラス1.2度まで上昇しており、世界各地で深刻な事態が起こっている。」このことを指摘しました。番組ではさらに、「プラス1.5度が地球の限界で、それを超えると地球が暴走し、温暖化の進行に歯止めがかからなくなる」という、科学者の警告を紹介しています。小泉環境大臣は、この警告に対する認識を問われて、「今後十分な対策が講じられなかった場合には、早ければ2030年に1.5度に達する可能性はある。パリ協定でもうたわれているように、気温上昇を2度より十分に低く保つとともに、1.5度に抑える努力を追求することが重要である。」このように大臣は答弁されました。さらに「その認識を日本社会全体のものにすることが気候変動に対処する土台になるのではないか」という指摘に対して、環境大臣も同様の認識をお持ちでした。

つまり、今のまま何もしなければ9年後の2030年には温暖化が止められなくなる基準と言われる、地球の平均気温が1,5度プラスに達する可能性があり、それを抑える努力が重要である。先週16日の火曜日、参議院環境委員会において、環境大臣はこのような認識をお持ちであるということがわかりました。

昨年6月の時点で、環境省として「気候危機宣言」を独自に公表しており、小泉大臣は当時、「気候非常事態宣言は議会が出すもの。議会から出してもらうことが危機感の共有になる。」と述べています。

私たちもぜひ、この言葉を受け止めようではありませんか。

議会として宣言することは、大変重要な意義をもつものと考えます。住民代表として市民から選ばれた議会は議決機関としての基本的な役割があります。議決機関である議会と、市長をトップとする執行機関は対等な立場であり、健全に対峙する緊張関係のもとでより良い自治体運営が行われることが基本です。上地市長は、2050年までに二酸化炭素排出量の実質ゼロを目指すという決意のもと、市民の皆さんと一緒に行動をしていきたいと、今年1月に横須賀市ゼロカーボンシティ宣言を表明しました。

市内の市民団体や環境団体も、この宣言を心から歓迎する声明を出しています。

今後、「市民・市民団体・事業者と連携して地球温暖化対策の取り組みをすすめていく」とする横須賀市の具体的取組を示し、スピード感をもって進めていくことが求められています。

宣言は、表明すること自体が目的ではなく、あくまでも行政が主体的になって温暖化対策を一層進めるための手法・手段のひとつです。しかし、先日の予算審議の際に、ある部局の資料には、いまだに「低炭素社会」というこれまでと変わらない文言が残されており、残念ながら市役所内では脱炭素社会の実現に対する認識が共有されているとは言えない状況が露呈されました。

市長の宣言だけではまだまだ不十分であり、議会側として執行機関を厳しくチェックしなければなりません。横須賀市議会としての危機感を、意思決定を示すことにより横須賀市全体に大きな影響を与える効果があります。執行部に対して緊張感とスピード感を、市民の皆さんには周知と連帯を呼びかけることにつながり、社会全体に対しても横須賀市の姿勢をアピールすることができます。

社会全体と言いましたが、国際社会では2016年にオーストラリアのデアビンというメルボルン郊外の町が、世界で初めて気候非常事態宣言を行ってから広がりを見せていき、2019年8月時点で世界人口77億人のうち約2億600万人が宣言をしているデータがあります。

国連事務総長は「人類と地球上の生物は直接的な存在的脅威に直面している」とのべ、ローマ法王は、「気候非常事態に直面しており、ただちに行動をおこさなければならない」と発言しています。日本も昨年11月、国会において超党派で議員提案が出されて、衆参両院で気候非常事態宣言を採択しました。

その国会よりもいち早く宣言を行った長野県の白馬村は、高校生の請願から始まりました。長野県白馬村は、夏は登山、冬はスキーなどの観光が主要産業ですが、温暖化のため雪が積もらなくなり、大きな打撃を受けているようです。

また、長野県は集中豪雨や大型台風など災害の増加等を踏まえて、気候非常事態宣言とゼロカーボン宣言をセットで表明し、県内77市町村すべての自治体が長野県の動きに、賛同を寄せています。長野県は宣言で、「今こそ将来世代の生命を守るため、気候変動対策としての「緩和」と、災害に対応する強靭なまちづくりを含む「適応」の二つの側面で取り組んでいかなくてはならない。」このように力強い決意を表しています。

今回の横須賀市で生まれ育った若い請願者の方も都市整備常任委員会において胸を打つ陳述を行いました。若者が自分の住む町の将来を考えて、自ら声をあげる動きが全国であらわれてきています。将来世代の暮らしに対して、政治がどのように動くかがまさに問われている時代であると言えます。

「気候変動問題に一番危機感をもって声を上げている人は若い人です」そのように強調する環境活動家の露木志奈(しいな)さんは、2月1日に横須賀総合高校のホールで気候変動の深刻さを訴えました。ご自身も大学生ですが10代の生徒たちに最後、次のように呼びかけました。

「活動の大小に関わらず、何かをすることに意味があります。自分という小さな世界を変える、行動に移すことがすべてのスタートです」。 今回の請願を採択することは横須賀市議会としての決定・態度表明という立派なアクションの一つであり、横須賀市としての姿勢を確実に強固なものにします。

ゼロカーボンシティ宣言があるから、新たな宣言は必要ないと思われるかもしれませんが、横須賀市は、「できることを一つ一つ積み重ねていく姿勢」にとどまっています。2050年の姿を想定し、逆算して現在の施策を考えるいわゆるバックキャスティング方式ではなく、現状から考えていく従来のフォアキャスティング方式にとどまっている感が見受けられます。2050年まであと29年あるから、ではなく、「今すぐにでもCO2を減らしていこう。そして自分の周りの環境をチェックしよう」という緊急性を呼びかけるものが気候非常事態宣言です。

横須賀に生まれ育ち、これからもこのまちで子どもを産みそだてたい、だからこそ議会に期待を寄せる横須賀市民の、二十歳の若き世代の声を直接聞いたうえで、横須賀市議会としての意思表明を内外に示すことは、議会としての存在意義を高めて、持続可能な社会づくりに向けてリードする役割を発揮するものといえるのではないでしょうか。

8年連続人口増加を達成した兵庫県明石市では一年前に、気候変動対策の推進に関する確固たる方針として、市議会の全会一致により「気候非常事態宣言」を表明しました。明石市はこの一年で、気候変動に関する啓発用パネルの作成、市のフェイスブック及びホームページによる温室効果ガスの排出状況、コロナ禍における家庭での省エネ対策等の情報発信、2050年「実質排出ゼロ」に向けたシナリオを検討するための基礎調査、ゼロカーボン市区町村協議会への参画などの取り組みを行い、3月9日、議会側に報告がされました。一年でこれだけのアクションが進められたのも議会の決議があったからではないでしょうか。

採決直前に行われる討論は、最後の説得行為ができる貴重な機会であると私は考えます。市長と環境大臣だけが危機感を持っているわけではないこと、市議会としての意思を何も示さないと市民の皆さんが戸惑ってしまうことにならないか、私は非常に心配しています。

市民の命と暮らしを守る観点から、地域経済の観点から、そして将来の子どもたちのためにもぜひ、気候非常事態宣言の決議を求める請願第1号に、議員の皆様からのご賛同いただけますよう、こころからお願い申し上げまして、日本共産党市議団の賛成討論とします。 

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この請願に賛成した議員は、木下義裕議員・小林伸行議員・小室卓重議員・藤野英明議員と私たち日本共産党の3人、計7議員でした。

反対討論はどの会派からも行われませんでしたが、採決では、自民党、よこすか未来会議、公明党が反対しました。

以下、全議員の賛否は、↓の最後の欄(議案番号=令和3年請願第1号、件名=気候非常事態宣言に関する決議について)

210324giinbetusanpi.pdf (city.yokosuka.kanagawa.jp)